他の記事を探す
相性がいい国の言語を学ぶ
2026年1月20日
こんな時代にロシア語のすすめ
「相性がいい国の言語を学ぶ」 黒田 龍之助
わたしはロシア語教師です。大学で教えています。
でも言語学も教えますし、ときどきウクライナ語とか、ベ ラルーシ語とか、ときにはチェコ語なんかも教えちゃいます。一時は英語教師もやっていました。 それでもわたしの中心には、いつでもロシア語があります。今までもそうでしたし、これからもそうでしょう。いろんな 言語や文学や歴史を勉強してきましたが、すべてはロシア語 理解のためです。 そのロシア語ですが、どうも人気がありません。だから学習者も少ない。ただでさえ少ないのに、最近はそれがさらに減っているのです。
今年はどん底だけど、来年になれば少しはマシになるかと期待するのですが、実際にはどん底をさら に下回る始末。ほとんど底なし沼です。 しかし振り返ってみれば、ロシア語は人気のある時期のほうが短かった気がします。わたしがロシア語に興味を持ったのは中学時代の一九七九年でした。ソ連がアフガニスタンに侵攻をはじめた頃です。翌年のモスクワオリンピックは、日本も含む多くの国がボイコットしました。そんな時代です。 どうしてそういうときにロシア語が面白くなったのかと いえば、う~ん、うまく説明できません。といいますか、い ろんな理由があったんでしょうけれど、忘れてしまいました。 だって四〇年以上も前の話ですから。 覚えているのは、ロシア語って面白いんだよという話をい くらしても、周囲には分かってくれる人がほとんどいなかっ たことです。ソ連はとても悪い国で、そんな国の言語を学ぶ なんてつまらないことだといわれました。本当はもっと酷いことをいわれたのですが、思い出したくないので省略。
で、わたしは考えました。国が悪いってどういうことなんだろうか。ところが中学生のわたしがいくら考えてみたところで、答えが簡単に見つかるはずもありません。 そこで「国」を「人」に置き換えてみました。完全に悪い人っているのかな。当時わたしのまわりには、それほどの極悪人はいませんでしたが、かといって神様のような素晴らしい人も見当たりませんでした。誰もがいいところもあれば、 悪いところもある。そんなものですよね。 ただし人気はさまざまです。たとえば学校のクラスにも人気者がいました。頭がよくて、スポーツが得意で、しかも面白くて明るい子。人気があるのも当然です。その一方で、地味で目立たない子もいました。不思議なことに、わたしはそういう子と友だちになることが多かったのです。付き合ってみればなかなか魅力的で、いろんなことを知っていたり、親切だったり、いっしょにいて楽しいんですね。そういうよさを自分だけが知っているというのも、また嬉しいことでした。
人には相性というものがあります。みんなから愛される人気者がわたしと気が合うとは限りませんし、反対に世間の評判はともかく自分とは相性がいい人もまたいるものです。 きっと国も同じで、人気のある国とない国があって、それとは別に自分とは相性のいい国があるんじゃないかな。だったら、人気はないけど気が合う国の魅力を探ってみよう。 そんなふうに考えたのです。国との相性はどんなふうにして分かるのでしょうか。
これは長年考えてきたのですが、大切なのは次の三つの条件のようです。
1.その国の料理がおいしいと感じるか。
2.その国の人が美しいと感じるか。
3.その国のデザインが好ましいと感じるか。
わたしにとって、ロシア料理はとてもおいしくて、ロシア 人はとても美しい。さらにロシアの街並みや、本の装丁や、 切手や、マッチラベルなんかのデザインが、なんだかいいなあと感じるのです。そういうすてきなデザインのポスターや レコードジャケット、それどころかお菓子の包み紙だって、 そこにロシア語があれば、どういう意味なんだろうかと知り たくなってしまうのです。もしあなたが外国に興味があるのなら 、上に挙げた三つの 条件を考えてみてください。それがすべて当てはまるのでしたら、その地域の言語を学ぶことをお勧めします。きっとうまくいきます。一方で、三つの条件はどれも当てはまらない けれど、経済成長が著しいからとか、就職に役立ちそうだか らとか、お金持ちだからとか、そういう理由から外国語を始 めても、まず長続きはしないでしょう。自分を騙しながら勉強することは無理できません。 将来のことは分かりませんが、二〇二二年秋のわたしには、 ロシア語の人気が急に上がるとは思えませんし、近いうちにロシアへ気軽に留学できるようになるとも考えられません。 そんな中でロシア語を勉強しようと思ったら、長い時間をかけて取り組む覚悟を決めるしかないのです。
ロシア語はなかなか厄介な言語でして、大学で四年間勉強したくらいではたいして上達しません。それでも本当にロシアと相性がよければ、ロシア語の学習は決して無駄にはならないでしょう。 この連載は、こんな時代にロシア語を学ぶ人へエールを送るために書いていきます。旧ソ連・ロシアとロシア語に関連して、わたしが経験してきた楽しくて、可笑しくて、ヘンテコなことをお話しましょう。きっとやる気が起きて、勉強を続けるキッカケになるはずです。 そしてその楽しくて、可笑しくて、ヘンテコな話の多くが、実はこのJICと深く結びついているのです。
2022年10月15日発行 インフォメーション他記事は下記よりご覧いただけます
https://www.jic-web.co.jp/jicinfo/info221.pdf
ロシア留学については下記ページよりお問い合わせください
https://www.jic-web.co.jp/cgi-bin/contact/study/index.cgi
ロシア旅行については下記ページよりお問い合わせください
https://www.jic-web.co.jp/cgi-bin/contact/estimate/index.cgi
その他お問い合わせご相談など
jictokyo@jic-web.co.jp
