__まずは「シュラレー」のシュユンビケ・デビューおめでとうございます。
 ありがとうございます。普段は「くるみ割り人形」のマーシャ、「バヤデルカ」のニキヤ、あとは「ジゼル」など、主なクラシックはほとんど踊らせてもらっているけれど、「シュラレー」はフォークロア的要素があって、とっても面白いバレエだわ。それに私の個性にもあってると思うの。いきいきとして身近って言ったらいいのかしら、踊っていてとても身になじむ感じ。

__少し「白鳥の湖」に似てると思ったのですが…。

 そうね、共通点はあると思うわ。でもオデットは白鳥で、どこか不安そうな囚われの存在だけど、シュユンビケは…具体的になんていう鳥かは知らないけど…森の中を自由に飛ぶ小さな鳥という設定なのよ。でも基本的に似てるわね。

__初めて「シュラレー」も観ましたが、最後のパ・ド・ドゥがとても気に入りました。「白鳥の湖」は全てが優雅でなければいけないけれど、こちらはとてもかわいらしくて。
 女の子らしさがあるでしょう? でも今ここで上演されているのは短縮版なの。ソロもいくつかカットされてるし、それ以外にも振付にいくつか変更があるし。違う鳥のように描かれているから、もしかしたら元のバージョンの方が好きっていう人もいるかもしれないわ。

__ここのバレエ団は海外遠征がとても多いですが、それはあなたがここのカンパニーを選んだ理由に含まれますか?
 それもあるけど、一番の理由はレパートリーが広いこと。他の劇場にはちょっとないくらい充実しているし、毎年プルミエ(新作披露公演)もあるでしょう。だから劇場側の「私と一緒に働きたい」っていうオファーは、私にとっても嬉しいものだったの。それで今日こうして「シュラレー」を踊れたわけだし…。

__では、あなたにとってここはいい職場?
 基本的にそうね。今後悔していないもの。劇場側との関係も上手くいってるし、労働条件も(他劇場に比べて)恵まれてるほうだと思うわ。もちろんツアーが多くてすごく忙しいから、自分の赤ちゃんにさえなかなか会えない時もあるけれど(笑)

__ご結婚なさってたんですか。
 ええ、今日シュラレー役を踊ってたルスラン・サヴジェーノフが私の夫。息子は今2歳半で、ドゥラートっていうのよ。ドゥラートっていうのはカザフスタン風の名前ね。ルスランがそうしようって言ったの。

__あなた自身カザフスタンの出身だそうですが、里帰りする時間もなかなかないのではありませんか?
 いつも夏にカザフスタンに帰るようにしています。それ以外にも仕事の合間とか時間を見つけて連絡を取るようにしています。シュユンビケがタタールの人里で暮らすようになったみたいに、今度は私がカザンで暮らすようになったというわけ。国民性なのかしらね(笑)

__カザンという街は気に入ってますか?
 ええ。とても穏やかで住みやすいわ。モスクワのバレエ団からもいくつかオファーがあったんだけれど、モスクワは活気がありすぎというか、時々静かな場所が恋しくなるから…。ここはアルマ・アタ(カザフスタンの首都)とも似ているし、もちろん故郷の陽気が恋しくなることもあるけれど、ここに来て6年になるからもう慣れたわ。

__これから先、どういう役を踊ってみたいですか?

 そうね…「コッペリア」。この間(200710月)のプルミエで踊りたかったんだけど、選ばれなくて…(※シーズン制をとっていないロシアではプルミエの公演数が限られるため、準備はしても実際デビューできるダンサーの数は少ないです)。でも来月ウラジーミル・アレクセーヴィチ(・ヤコヴレフ/バレエ団監督)が来月スワニルダ(「コッペリア」のヒロイン)を踊ってみないかって。

__「スパルタクス」は?(※今年7月にコフトゥン振付による初演が予定されています)
 もちろん踊ってみたいわ! 具体的な話はまだだけれど、少し変わったアダージョやソロを試してみないかということは内々に言われているの。今私はリリカルな役柄を踊ることが多いんだけど、エギナ(※「スパルタクス」に出てくる将軍の愛人役)とか、そういう役を踊って自分のレパートリーを開拓したいという気持ちもあるし。ゲオルギー・アナトーリエヴィッチ(・コフトゥン)の振付けはとてもアクロバットだから、面白いわ。

__背中が痛くなりませんか?(笑)

3日間リハーサルが続くと全身痛くなるわよ!(コフトゥンは)私はリフトしやすいって言ってくれているけど、それでも彼の振付けるリフトの多くはバレエ学校では習わなかったものだから大変。男の子は精神的にももっと大変だと思うわ。

(これから彼女のシュユンビケ・デビューの打ち上げがあるそうで、他のダンサーが迎えに来ました)
__今日は公演後お疲れのところ、ありがとうごさいました。





3月13日に鑑賞した「シュラレー」で主役を踊られたアレクサンドラ・スロジェーエワさん(写真左)とアルチョム・ベーロフさん(写真右)に、公演後、インタビューをお願いしたところ、お2人ともとても感じの良い方で、快く応じて下さいました。 そして実際お話を伺ってみると、お2人ともとてもお話し上手で、面白いお話をたくさんお伺いすることが出来ました。
 特にスロジェーエワさん、すっぴんなのに、お肌が輝いていました(笑) とても一児の母親には見えません。

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__公演お疲れ様でした。あなたはここタタール・バレエのプリンシパルとして海外遠征でも色々な役を踊っていらっしゃるそうですが、バレエ学校卒業後、すぐにプリンシパルになったんですか?
 まさか! 最初はコールド・バレエ(群舞)としての採用でした。それからそれほど重要ではないソロを、次に目立つソロ…というように少しずつ階段を上っていった感じです。


__ではタタールスタン功労芸術家になったのは最近のことなんですか?
 ええと…称号をもらったのは6年前のことなので23歳の時です。ここで踊り始めてもう12シーズン目になりますから。

__リハーサルを見学させていただいた時、跳躍が高くて驚きました。踊り全般もとてもエネルギッシュで。昨日、公演の映像を見せていただいたんですが、あ、この人上手!と思うと大抵あなただったりで。「海賊」のビルバントとか、「ドン・キホーテ」の…
 エスパーダですよね。キャラクター・ダンスは大好きなんです。親しみやすいというか、クラシック・バレエは自分にとってより難しいものなので。もちろん、「くるみ割り人形」「眠れる森の美女」「ジゼル」も踊っていますよ。

__キャラクター・ダンスの方がより好き、ということですか?
 ええ。私の父も母も兄も妹も民族舞踊をやっているので、環境ですね。私自身、イーゴリ・モイセーエフと彼のカンパニー(※モスクワに自前のアカデミーを持つ民族舞踊専門のカンパニー)が大好きなんです。

__あなた自身もカザンの出身だそうですが、幼いころからここのバレエはよく観ていたんですか?
 バレエよりも、まずタタールの民族舞踊でしたね。父が民族舞踊アンサンブルを主催していたので、もう民族舞踊が骨の髄まで染み付いてます。タタールだけでなく、ロシアや世界各国の民族舞踊を子供のころから見ていたので、民族舞踊と共に成長したと言ってもいいくらいです。
 それに母がタタール人で、自分自身タタールの血が流れているので、タタールの文化そのものがとても身近に感じるし、愛着もあります。今も劇場での仕事の合間に、父のカンパニーで教師もやっています。タタール舞踊の助けになればとも思いますし、何か新しい振付を探すように努力しています。

__タタールの人たちは運動能力が高い、という印象が個人的にあるのですが…。
 ええ、まずタタール人の身体能力は高いですね。でもタタールだけではありませんよ。カザフスタン、バシキールスタン(ロシア連邦内の共和国)なども…特にバシキールスタンは同じモンゴロイドの血をひいていますから、国民性など似通ったところも多いです。

__特にここカザンにはスポーツ関連の施設が多いですよね?
 とても。数は非常に多いですね! バスケットボール、バレエボール、スケート全般、ホッケーなど、基本的にスポーツが非常に盛んな街ですね。これはとてもいいことだと思います。

__あなた自身はなにかスポーツをやってみたいと思わないのですか?
 今は特にしたいと思いません。私はもうダンサーで、脚に格別気を遣わなければいけませんから。でも小さいときはスポーツが大好きで、特にスケートが好きでした。バレエ学校時代はよく時間を見つけて遊んでいましたよ。バレエ学校側に隠れてこっそりと(笑)

__バレエ学校はスポーツに反対だったんですね。でもスポーツの経験は、バレエにとっても助けになることもありますよね?
 もちろん! ゼレンスキー(※マリインスキー劇場のプリンシパル・ダンサー兼ノヴォシビルスク・バレエの監督)がいい例です。彼も子供のころ陸上をやっていたんですよ。他にここタタール・バレエにもスポーツ経験者は多いです。ルスラン(・サヴジェーノフ)も体操競技からの転向組ですが、とても跳躍が高いテクニシャンでしょう。
 とはいえ根本的にバレエとスポーツは違いますから、両立することはできません。筋肉のつけ方も全く異なりますし。スポーツマン体型のバレエ・ダンサーなんて変でしょう? でももちろん、特に技術の面では小さい頃にスポーツで身体能力を磨いておくことは有利に働くと思います。

__あなた自身は民族舞踊によって身体能力を磨いていたということですね。今度の「スパルタクス」初演ではスパルタクスを踊ると伺いましたが…。
 彼の舞踊言語はとても複雑で、踊る側としては非常に過酷です(笑)でも観客が彼の振付を好んで、喜んで下さるのは、私にとってもとても嬉しいことなんです(※コフトゥンはここのバレエ団のために「ペール・ギュント」「ユスフェの物語」の2作を振付けていて、特に前者はカンパニーにとって重要なプロダクションになっています)。今はまだリハーサルも始まっていないのですが、プルミエ(新作披露公演)は7月の予定です。よろしければ是非観にいらしてください!

__ありがとうございます。今日は公演後お疲れのところ、興味深いお話を本当にありがとうございました!